代表的な業界用語

  • AD

    だれでも知っているアシスタントディレクターのこと。「テレビ界の底辺で働く3K職業の代表」なんて言い方をされ続けておりますが…

    READ MORE
  • 放送作家

    基本的には番組の流れを考えながら、台本及びナレーションの原稿を書くことを生業としている人たち。のハズではある。新番組が決まると、まず最初に…

    READ MORE
  • しこみ

    出演依頼の交渉をし決定する事。キャスティングともいいます。番組においてのしこみは命です。しこみは基本的に…

    READ MORE
  • バミる

    出演者や美術セットなどの位置を決めた時、目印としてその場所にテープを張ります。これを「バミる」といいます。活用としては…

    READ MORE
  • カンペ

    だれにでも経験があるカンニングペーパーのこと。テレビで使うカンペは試験とは違い巨大です。主に番組のオープニングのあいさつやプレゼントなどの決まりゼリフ、歌番組で…

    READ MORE
  • ワンクール

    テレビ人は皆知っていますが、1年は52週なのです。それを4で割って13週、これをワンクールといいます。13本、番組の放送回数はこれが単位となっています。13、実に不吉な数…

    READ MORE

上記以外にも多くの業界用語を掲載しております。
詳しくは以下の " 項目一覧 " からご覧ください。

菅原正豊のテレビ言語の基礎知識

このエッセイは、当社の代表取締役演出家、菅原正豊が毎日新聞社の依頼により執筆し、1993年10月から1994年9月までの1年間、毎日新聞のコラム欄に掲載されたものであります。
全94話の『業界用語』を取り上げておりますが、只今業界の現況に合わせて追記を行っております。

テレビの制作会社

当然ではありますが、テレビを組み立てる電気系の会社の事ではありません。その証拠に、ここに働く人たちはテレビが壊れても直せません。ましてやテレビは何故映るのか?なんて事は考えた事もありません。
制作会社は非常に利益の薄い商売ですが、にもかかわらず物価の高い港区周辺に集中しています。そのくせ働く人のほとんどは23区外に住み深夜宅送の経費を会社はいつも問題にしていますが、このことは二度と使用しない膨大な量の収録済みのテープを保管するために芝浦の倉庫を借りているのと同じくらい、永遠に解決しないテーマなのです。
制作会社は主にドラマ系と情報系とバラエティー系に分けられますが、それは家具屋と運送屋と不動産屋くらい、目ざしているものも社風も違うのです。ということで、これから入社を希望の方々、くれぐれも気をつけてお選び下さい。

※現在は収録済みのテープをデータ化して保存する様になり、省スペース化を実現しています。

企画書

仕事が決まる時に形式的に作る書類のこと。なるべく短く簡潔に、紙っぺラ1枚あれば、その目的は足せるのです。
一方、採用する側においては、なるべく厚く難しい文体で書き込んである方が担当者としては安心感につながります。
番組が当たるかどうかということは企画書の良しあしとは全く別の次元のことです。その証拠にほとんどの番組は放送される時点では企画書の原形をとどめないケースが多い。特にバラエティー番組は内容を企画書で読みとることは不可能に近いとされています。
「ボキャブラ天国」も「夜も一生けんめい」も「イカ天」も......発注した担当の方に勇気とあきらめがあっただけなのです。
私が書いているこの欄も企画書のないまま2日前にたのまれ、方向性もわからぬままに書いております。企画書くらい作ってくれたらいいのに......。

期首特番

4月と10月の改編時期に、他局がやるから、どの局もやらざるをえない、テレビ局のお祭りみたいなもののこと。
通常は裏表にでることはタブーとされている出演者も、この時期だけは「しょーがねえ〜な〜」と許される場合が多い。これは雨で野球が流れて放送日の日程が狂いカチ合った以外では、ほかに正月のみに許されるテレビ界のルールなのです。
期首番組を作るうえで一番大事なことは、企画でも演出でも出演者でも予算でも、ましてやクイズの賞金の額でもありません。
それは当日の新聞タイトルのつけ方なのです。2時間番組の10行×12行程の行間をどう埋めるか?担当プロデューサーは清算の合間をぬってこの作業に集中します。つまり当日のラテ欄こそが期首一番の見どころなのです。
新聞社のみなさんにはぜひ「ラテ欄コピー大賞」の開催をお勧めします。しかし、こんなに苦労したラテ欄ではありますが、ダメな番組はやっぱりダメなのです。

会議

会議はレギュラー番組において週1回、2時間くらいを基本とし、通常はプロデューサーの仕切りで進められます。
会議において大切なことは「遅刻した時の言い訳」「早退する時のタイミング」この2点に絞られます。あとはその人間の立場によってその2時間をどう過ごすか、が本人自身のテーマとなるのです。
会議の席は特別決まってはいません。第1回会議の時に着いた場所が、番組の続く限り、その人の定位置となります。先のことを考え、なるべくドアに近い席を取ることをお勧めします。
通常会議で物事が決まることはほどんどありません。問題点が出され、いつも決まった人のみが発言し、何となく雰囲気で解散します。持ち越された問題点に関してはその後、担当のディレクターが一人で悩めばいいのです。こうして毎週この繰り返しの中で番組は作られていきます。会議は番組制作において人間修行の場なのです。

放送作家

基本的には番組の流れを考えながら、台本及びナレーションの原稿を書くことを生業としている人たち。のハズではある。
新番組が決まると、まず最初に「作家はだれに頼もうか?」ということから始まります。その場合の選択肢としては「会議が盛り上がるから」「顔が広いから」「変だから......」などの理由で作家は選ばれていきます。
最後に「じゃ、だれが書くんだ !?」ということになって、文章がちゃんと書ける作家が参加します。
また、放送作家は他のジャンルの職種に比べて責任がありません。たとえ台本がつまらなくても「あいつに期待したのが間違いだった!」で済まされるのです。彼らのほとんどは外車に乗り、年に数回は海外に遊びに行きます。
「責任と収入は反比例する」。これが業界の常識なのです。
テレビ番組が出来ていくうえで特殊な能力を持つ人たち、それが放送作家なのです。

編集

収録したテープを放送時間内につなぎ込む作業。
本編集の前のオフライン編集から始まるこの作業にスタッフは数日間、24時間カンヅメ状態になるのです。深夜から朝にかけてはコンビニで買いこんだ夜食と栄養ドリンクが生きるための主食となります。買い出しは末端のADが行うため健康に気をつかうことなど考えません。彼らの好みである甘い物を中心にラインアップされるのです。
たばこは5分に1本はすすみます。つまり酒を飲む以外の体に悪いとされている行為はすべてこの作業中に行われるのです。
しかし一番問題なのは、一般人との間におこる生活サイクルのギャップです。業界には多数の家庭破滅者がおりますが、そのほとんどがこの期間中における不信感が原因なのです。
編集さえなかったら......温かい家庭はもっと長続きしているのかもしれません。

予算

番組制作は予算を中心にすべてのことが決まります。予算のある番組の場合、弁当はランクが上がり、しかも余ります。
プロデューサーは打ち合わせと称して、シーズンに5回はフグを食べます。打ち上げはバスつき、温泉つき、カラオケつき、ゴルフつきです。とにかくプロデューサーはすべてのことをカネで解決出来るのです。
予算のない番組の場合は、まず交通費、食費を切りつめることから始まります。当然弁当は足りなくなります。スタッフはフグの存在はもちろん、すし屋のカウンターの存在すら知りません。打ち上げなどやりません。忘年会でさえ、スタジオの片スミでカワキモノですませます。
プロデューサーはすべてのことを誠意で解決するしかないのです。担当する番組の予算、それによってプロデューサーの人生は変わるのです。

※ 現在は、業界全体で低予算化が進んでいるため、いかに安く、おもしろく作れるかがプロデューサーの腕の見せ所です。

MA

編集後のテープにナレーションや音楽、SE(効果音)を編集所内のMAルームで24チャンネルのマルチテープに次々と録音し、最後にそれをミックスして完成させる作業で、番組制作において最後の仕事となります。
MAはマルチ・オーディオの略ですが知らなくても仕事に影響はありません。ちなみにSE はサウンド・エフェクトの略です。この作業によって今まで地味だった映像はが然活気づきます。
ラーメン屋は器の音がとびかい、旅は列車の音やカモメの声で郷愁をさそいます。思い入れのシーンではナレーションとともに服部克久の音楽が流れ感動を呼び、スタジオは何がおきても、足した笑いで爆笑の渦となるのです。
しかし......業界では、こう言われています。「MA 前が視聴率!」。収録した素材に力がなければ、結果は見えているのです。

音効

MA(前回説明ずみ)の時となると、山のようなテープとCDを持って現れ、疲れ果てて気を失っているディレクターを横目に、次々とマルチテープに音をいれ、明け方、気が付くと消えているナゾの仕事人のこと。
正確には音響効果といいます。彼らはあらゆる音を持っています。ガ〜ン!とかドカーン!とかポン!とかポョーン!とか ......。あの音はいつ、だれが、どうやって作ったのか?それもナゾに包まれているのです。
音効さんは重要な番組スタッフであるにもかかわらず、ほとんどの関係者に顔を知られていません。MA以外で彼らが顔を出すのは番組のゴルフコンペの時くらいです。
最近では「音効さん」という深夜番組まで登場し、あこがれのトレンディーな職業になるか?とも言われてますが......。どうなりますか。

※『音効さん』・・・1993/10/11 〜 1994/03/21 に放送していたフジテレビのバラエティ番組。世界で初めて“音響効果”をバラエティにして遊んだ番組

テロップ

テロップは10cm×12.5cm程の黒い紙で、コンピュータによって色をつけたり、動かしたりいろいろなことが出来るのです。
一般的には白い文字を色のついたエッジで囲むか、片側だけ、エッジをつけシャドーにするか、の方法で出しますが、それに「下にザブトン敷いて!」とか、テクニックが加わるのです。
業界の習慣としては「3 秒以上出せば読める」とされています。
テロップの出し方はディレクターのセンスが問われますが、センスのいいのと視聴率のいいのは逆行するのです。
一番センスが悪くて派手なのはワイドショーの右下にずっと出ている手描きのテロップですが、あれのおかげで視聴率は逃げないのです。
いずれにしろ、テロップの出し方一つで制作会社の社風がわかります。注意してごらんください。

※ 現在は編集のハイテク化に伴い、上記のいわゆる黒い紙のテロップを目にすることは無くなりました

スタッフロール

番組の最後に流れるスタッフ及び関係会社の一覧表のこと。長いので巻いたテロップを使用するためそう呼ばれています。
スタッフロールはなぜか作家から始まり、制作会社、テレビ局で最後となります。
ここには番組にかかわったほとんどの関係セクションの名前がのりますが、一番悲劇な労働を強いられたADや、スタッフが一番迷惑をかけたテロップ屋さん、台本の印刷会社はあまりのっているのを見たことがありません。
スタッフロールに名前がのる!この裏には多くのドラマがあります。
ADから昇格して初めて名前がのるディレクター、彼はこの感激を実家と学生時代の友人たちに報告します。実家ではこの出来事を親せき中に連絡します。 放送当日、彼の関係者だけは、最後のスタッフロールをビデオに収録しながら、かたずをのんで見守るのです。

※ 当時は黒くて細長い紙のロールでしたが、現在はハイテク化が進み、主にデコという機械でテロップ同様、編集所で作成するようになりました。

A D

だれでも知っているアシスタントディレクターのこと。
「テレビ界の底辺で働く3K職業の代表」なんて言い方をされ続けておりますが、こうしたマスコミの誤った報道のため、AD志望者は激減し、需要と供給のバランスはくずれました。
そのため今やADは社内において、一番恵まれた地位を勝ちとったのです。
制作会社においては、もしかしたら、社長より大切にされているかもしれません。当たり前のことですが、社長はいなくても番組は作れますが、ADがいなかったら、番組は作れないのです。
彼らは昼過ぎから出社し、会議の席では睡眠をとり、夕食は焼き肉食べ放題、帰りはタクシーの生活です。
しかも、あこがれのタレントから「ちゃん」づけで呼ばれるのです。あなたもADになって、青春をおう歌してみませんか......。

※ 現在のADが焼き肉食べ放題、タクシー乗り放題かどうかはADになってみてから体験してみて下さい。

フロマネ

スタジオで番組を進行するスタッフのチーフをいう。フロアマネジャーの略。
初めてスタジオ見学に来た人は「あの人がこの番組のディレクターなんだ!」と思いますが、違うのです。ディレクターはスタジオの上のサブコンという所で下の画像を見ながら働いているのです。
フロマネが出演者をノセたり、次の段取りを指示したり、現場にいないで勝手なことをいうディレクターの要求を表面上は笑顔で次々とさばいていくのです。
この仕事で一番の条件は声がデカイことです。
私の知っている日本一のフロマネの F 君は 24 時間テレビの際マイクなしで武道館いっぱいに届く声を、一睡もせずに24時間出し続け、そのまま朝まで飲んで次の仕事に出かけ、また怒鳴ってました。
常人には考えられない体力と声帯、フロマネの究極がそこにあります。いずれにしろフロマネはスタジオにおいて、もう一人のタレントなのです。

フェードアウト

本来は画面をだんだん暗くしていって最後には真っ黒にしてしまうことをいいますが、今ではそういう技術的なことより、会議や仕事の現場から、いつの間にかいなくなってしまうことの方をいいます。
同じような言葉で、そうっと入ってくるのをフェードイン、突然登場するのをカットイン、大騒ぎして瞬間に消えるのをカットアウトといいます。
フェードアウトの仕方にはいろいろあります。トイレや電話を利用する方法、駐車違反を確認しに行きながら消える方法、出前が来た時、ドサクサにまぎれていなくなる方法、いろいろありますが、いずれの場合もたばこと 100 円ライターは残して行くことが大事なポイントです。
私の知っている作家は、そのためにいつも 100 円ライター 5 個はポケットに入れています。
F・I、F・O、C・I、C・O、この使いわけが出来るようになれば、立派なテレビ人として認められるハズです。

※ 現在はこの業界も喫煙者が減ってきたため、この技を使う人をほとんど見かけなくなりました。

カメラ割り

新番組が始まる時、それを祝って、出演者及びスタッフはスタジオのカメラをたたき割ります。テレビ界にはこうした鏡開きにも似た儀式が、あるわけないのです。
カメラ割りはスタジオで進行していく動きを5、6台のカメラでどう撮っていくかを台本上であらかじめ決める作業をいいます。
特に歌番組などになると、これが命となります。ディレクターはテープを聞きながら、指をパチンパチン鳴らしながら、カメラ割りを考えます。
極端なことをいうとこの作業が終わると彼の仕事はほとんど終わったも同然です。
台本を見ると TS、BS、GS、ZI、ZB、PAN、ドリー等々の専門用語がカメラ番号とともに歌詞にそって書きこまれています。
たとえば、TS は、タイトルショット、BS はバストショットの略です。皆さんもテレビを見ながら小節ごとに指を鳴らして自分なりのカメラ割りを考えるのも暇つぶしになると思います。

アドレス

収録するテープには時間の信号が打ち込んであります。この数字をテープの住所ということから、アドレスといいます。(タイムコードともいうのです)
このアドレスを本編集でコンピュータに打ち込んで、つないでいきます。
本編集の前のオフライン編集でディレクターがつないだテープから AD は編集点のアドレス を徹夜で表(エディットシートといいます)に書き込んでいくのです。
「テープAの13分15秒18フレ(1秒の30分の1をフレームといいます)〜 18 秒 15 フレ迄(まで)」、画は「ラーメンのナルト」という具合に住所番地に名前が加わるのです。
この作業は気を抜くと1カット飛ばしてしまったり、数字を間違えたり、ADは必ずポカをやります。このことにより編集室はパニックとなり、ADは翌日頭を丸めることになるのです。
AD 諸君、正月も近いことです。年賀状の住所と名前はくれぐれも間違えないようにしましょう。

※ 現在は、PC でのオフライン作業が主流になり、ソフトの機能の1つである『EDL 書き出し』という自動的にシートを取ってくれるというありがたいシステムが使えるようになり、あまりエディットシートを取ることがなくりました。その分 AD は楽になっているとか・・・ (ソフトは Final Cut Pro を使用)

ひっぱり

テレビの視聴率は分刻みでカウントされていきます。その平均がその番組の視聴率となって表れるのです。
そのため、制作者は一度チャンネルを合わせてくれた視聴者を最後まではなさないよう、あらゆる手をつかって番組を組み立てます。
「ひっぱり」それが番組の命なのです。番組の会議では「そのネタじゃひっぱれねーだろー!」とか「ここまでひっぱれば、あとは見てくれるだろう!」とか訳の分からない会話が飛びかいます。
ひっぱりのテーマはふたつあります。番組全体のひっぱりと、CM間をのりきるひっぱりです。
例えばスペシャル番組では、宜保愛子の番組を支える大きなナゾの解明は番組後半までひっぱります。しかし CM 前になると必ず新たなナゾが登場してくるのです。
こうしてテレビはひっぱりにひっぱりながら、相手よりひっぱり勝った者が勝利者になる、つまり綱引きみたいなものなのです。

てこいれ

この時期になると、来年の4月の番組改編を前に視聴率の芳しくない番組は最後のあがきをはじめます。不良債権番組、視聴率向上最終作戦「てこいれ」です。
「てこいれ」の方法はいろいろあります。司会者の見直し、出演者の補強、セットをもっと派手に、新コーナーの誕生、クイズ番組だと問題数を増やしたり、早押しを投入してテンポ感を出したり。それどころか、T バック姿の女性をウロウロさせたり、意味なくラーメン情報を入れたり、とにかくありとあらゆる手を使います。
その結果、最初に発想した番組とは全然違う番組になってしまったりもするのです。こうした「てこいれ」のせいかどうか、視聴率5%だった番組が7%位に上がることが、たまにあるのです。
スタッフは「よし、来週は10%!」と一瞬盛り上がります。しかし......。すべては来年の4月になればわかるのです。

海外ロケ

海外には今や、驚くようなネタはほとんどなくなりました。ピラミッドもナスカの地上絵もインカ帝国もガラパゴス島も、日本のテレビはすべて撮りつくしてしまったのです。
今テレビで取材する価値のある海外は、商売のネタと料理人くらいしかないのです。
海外ロケは基本的にはディレクターとENGのクルー(カメラ、VE)の最小限3人で1チームとなります。これに英語のシャベれないスタッフのために通訳兼コーディネーターが現地で付きます。国によってはプロデューサーも同行します。彼らの間ではタイが人気です。
プロデューサーの同行しないロケではディレクターが全責任を負います。彼が海外ロケで要求されることは、現地で新聞ザタにならずに、ちゃんと映っている収録テープを持って編集日までに帰国し、しかも仮払いを余らせる。これが出来れば優秀なディレクターとして評価されるのです。
番組の出来とは全く別の話なのです。

※「ショーバイ」と「料理人」あくまでも17年前の話です。

ケツカッチン

出演者のスケジュールで「次の予定が入っているので、何時何分までしかいられない」という時、タレントはその時間がケツカッチンだ!ということになります。
年末年始の大型特番は、ケツカッチンのタレントだらけです。タレント側は次の仕事の入り時間と移動時間を逆算し30分ほどの貯金を持ったうえで申告します。制作側はその貯金を見越して「30分はひっぱれるな!」と読みます。
タレントマネジャーは番組がおして遅れるときのことを、あらかじめ予測し、次の仕事場に「何分までなら待てるか?」と秘密の隠し時間を持ちます。
番組プロデューサーは番組がおした時、どの時点でタレントを離すか、をスタッフ間で確認します。
「このコーナーまではいてもらわないと困るけど、その後なら離してもいい......」ケツカッチン 30 分前くらいからは両者の綱引きが始まります。
いろいろなドラマがあった末、CM が明けると、そのタレントは見事に画面から消えているのです。

忘年会

基本的には、よっぽど悲惨な番組以外は、年末になると忘年会が番組単位で繰り広げられます。
忘年会の日程はメーン司会者のスケジュールを最優先させます。予算は各方面のご協力を中心にひねり出されます。
趣向はあまり凝らない方が賢明です。以前にスタッフ全員の生ギターによる「禁じられた遊び」大合奏という企画がありましたが、大失敗でした。
メーンイベントとなるのは賞品の抽選大会です。賞品の豪華さによって番組の現在のポジションがわかります。
忘年会のしめくくりは今やどの番組も必ず「全員参加、勝ち残り、司会者とジャンケン大会」です。これに勝利し、一番の賞品を獲得したのがいつもがんばっている AD だったりするとば声は浴びながらも、その場は温かい雰囲気で終われます。
しかし、それがたまたま顔を出しただれも知らない関係者の友人だったりするとせっかくの忘年会がしらけて解散となるのです。
忘年会は来年の勢いを占ううえで大切な一夜なのです。

ワンパターン

普通ワンパターンは、まったく変わりばえしないことを言い、否定形の言葉とされています。
しかし、テレビにおいてワンパターンは称賛の言葉とされ、芸術とまで言われるのです。
大みそかは紅組か白組かを見届けて除夜の鐘を聞き、元日は富士山の日の出から始まることによって新しい年が来たことを確認します。
いつまでも料理を作り続ける夫婦の番組、列車の窓から外の景色を撮り続ける番組、おせっかいに悩みの電話を受ける司会者の番組、偉大な番組はすべてワンパターンなのです。
もっとすごいのはゴルフのマスターズのディレクターで、十数年同じカット割りでトーナメントを撮り続けているのです。
このようにテレビディレクター の究極の目標はいかにワンパターンを作り上げるかなのです。
しかし、問題なのは10年以上続いたから評価されるのであって、2〜3回で終わると、無能のらく印を押されてしまうことなのです。

※『マスターズ』が日本ではほとんど注目されていない時代の話です。

プレビュー

再生とか試写のこと。
プレビューといってもいろいろあります。スタッフ間で撮ってきたものを、ただ再生して見るだけのものから、完成したTAPEを放送前にスポンサーの人たちを前に行うものまで。
スポンサープレビューは制作者側にとって一大イベントです。彼らはあらゆる言い訳を考えたうえでプレビューに臨みます。
プレビュー室はそれぞれの立場による人間模様の縮図なのです。
番組プロデューサーは気になっている個所が何事もなく通りすぎることを祈りながら、ディレクターは自信のあった爆笑のハズのシーンにだれも反応を示さないことにとまどいながら、 代理店の人間は競合他社の商品がどこかに映ってないか、だけに神経を絞りながら、タイムキー パーの女性だけが機械的にCMの入り時間をチェックしているのです。
そしてスポンサーの反応は......。こうしたドラマを経て番組は放送にたどりつくのです。そうして視聴率次第で、次のドラマがまた始まるのです。

インサート

インサートというと、あのことを想像してしまいますが、テレビ業界で言うインサートもやはり、あのこと、つまり挿入することを言うのです。
例えば、スタジオでAとBが盛り上がってやりとりしている時、それを見て笑っているCの顔をはさみ込むのが、インサートです。
ディレクターはスイッチャーに「ここ! 3カメのCの顔UPでインサート!」と叫びます。
編集でもラーメン屋のオヤジのインタビューをつなぎながら、ラーメンの映像をかぶせる時、ディレクターはオペレーターに「そこんとこはドンブリのUPをインサートね......」とつぶやきます。
インサートは本来、本線の映像をよりわかりやすくしたり、より盛り上げるために効果的に使用するものですが、編集でうまくつながらない時に、仕方なく違う映像をはめ込んで逃げる場合にも便利なテクニックの一つです。
いずれにしろインサートは、あまり強引でなく、スムーズに気持ち良く行いたいものです。

O L

オーバーラップの略。
当然ですがオフィスレディーのことではありません。同一画面に2つ以上の映像をダブらせることを言います。
ディゾルブとも言い、業界では、「そこんとこディゾって......」とか「そこ、ディゾりで......」と活用します。
OLは主に思い入れのあるシーンに使用されます。ドラマでは、恋人との追憶シーン、ドキュメンタリーでは目的を果たした感動的なエンディング、歌番組ではサビの盛り上がりで歌手のアップがOLで浮かび上がります。いずれにしろ、ここ一番というシーンでOLは効果的に使用されますが、あまりクイズ番組やお笑いの番組では使用されません。
OL の深さ、つまりダブらせる時間の長さが思い入れの深さにつながります。またOLはスローモーションと併用することにより効果は倍増します。
スローとOLとバラードの名曲 この三位一体があれば、だれにでも番組は感動的に作れるのです。

インチ

VTR のテープはメートル法全盛の現在において何故かインチの単位で作られています。
これはゴルフがヤードを単位としてプレーされるのと何らかの関係があるのでしょうか? かつて放送用のテープは幅の広い2インチでした。それが1インチとなり、ある時期ロケのみ3/4インチを使う時代を経て、今や家庭用と同じ1/2のベーカムで収録してD2で放送するなど、ややこしくなっています。
入ったばかりのADはまずこれらテープの種類を覚えることから始まります。
しかし実際これらのテープの太さを測った人間はほとんどいません。太いのが1インチ、細いのが1/2、その中間が3/4やD2、と形で覚えただけなのです。
当然1インチが2.5センチだとか、ましてや1/12フィートだとか、1/36ヤードだなんてことも知ってる必要はありません。
これはゴルフで「6インチOK」と言われた時、それが15.24センチだと知らなくてもプレーしていいのと同じように、それほど支障のないことなのです。

※ 現在は地デジ化に伴い、インチも完全に姿を消し、HDCAM、D5 などのハイビジョン用の最新テープに取って代わられました。

サブコン

スタジオに隣接する部屋で、ディレクターはここから指令をだします。
Sub-Control Room(副調整室)の略です。当然、主調整室もあります。これらはマスターといいますが、また今度説明します。
サブコンはカメラ、照明、音声などの機材卓があり、各パートのチーフがいて、それぞれの部門を取り仕切ります。
ここではディレクターとカメラのスイッチャーとタイムキーパー(TK)がたくさんのモニターの前に並んでおり、その後に音効さん、というのが基本のフォーメーションです。
スタジオが大騒ぎしている中でサブコンはスイッチャーさんのペースでたんたんと時が流れます。
ところが生放送となると大変で、ヒステリックな TK のペースでスタジオ以上にここは戦場と化すのです。
いずれの場合もサブコンにおいてディレクターとして大事なことは、なめられないよう振る舞うことなのです。

番組タイトル

タイトルのない番組はありません。「題名のない音楽会」というのもタイトルです。
新番組が出来る時、企画書の段階ではタイトルは仮でつけられます。番組決定と同時にスタッフはタイトル案を徹夜で数百も考えます。
最終的には時間切れで「こんなもんだろー」と決まります。あまり「これが最高だ!」といって決まったタイトルはありません。
番組タイトルを考える時、一番大事なことは新聞のラテ欄との関係です。ヨコ 10 行へなるべく1行で入れるためには 10文字以内で考えなくてはなりません。それでもゴールデンタイムならタテも数行ありますが、深夜番組ではヨコ1行も使えなかったりするのです。その条件の中で「!マークをどう使うか?」とか「漢字とカタカナとひらかなをどう配置するか?」とか、スタッフはそれなりに研究した結果、タイトルは誕生しているのです。
あたる番組とタイトルの関係 ......明日は例を挙げて説明します。

番組タイトル-その2-

番組のタイトルを決める時、大事なポイントは縮めて、愛称として呼べることです。
「なるほど」「ショーバイ」「マジカル」「ねるとん」これだけでどの番組かわかります。
一方、「まる見え」「生ダラ」「木スペ」のようにそれだけ聞くととてもはずかしくて口には出しにくい言葉も、番組さえ認知されてしまえば「生ダラの○○で〜す!」と女性スタッフでも平気で言えるようになるから不思議です。
かつて「おめざめマンボ」略して「おめマン」という番組を作りましたが最後まで認知されずにスタッフは恥ずかしい日々を過ごしました。
また一方「夜も一生けんめい」のように縮めにくいタイトルは「夜は......」とか「今夜も......」とかいまだに間違えられます。
「EXテレビ」にいたっては「イーエックス......」と読まれてしまうのです。
いずれにしろ番組さえあたればタイトルはついて来ます。いいタイトルというのは、あたった番組のタイトルのことをいうのです。

※ 他にも『アド街』・『イカ天』・『ボキャ天』・『ヒッパレ』・『チューボー』などの番組が愛称で呼ばれています。

しこみ

出演依頼の交渉をし決定すること。キャスティングともいいます。
番組においてしこみは命です。ドラマでも、バラエティーでも、ドキュメンタリーでも、出演者によって番組内容は変わってきます。
しこみは基本的にはプロデューサーの仕事ですが、この場合一番大事なことは相手方との信頼関係です。それが出来上がっている場合はスケジュールさえ合えば、電話だけで簡単にOKとなります。
しかし、まったくの初対面で、しかも番組も認知されていない場合は大変です。先方の担当マネジャーとなんとかコンタクトをとり、お茶でも飲んで、名刺交換をし、自分は決してあやしいものではないことを述べ、番組趣旨、企画内容を説明し、共通の業界人の裏話などで親近感をもたせます。
しかし、こうした苦労の揚げ句、「まあ、しばらく番組を見させて頂きます ......」という返事で終わってしまうのです。
「しこみの楽な番組を作る!」。これがプロデューサーの悲願なのです。

仮払い

仮払金は請求書扱いでない支払に対して使われるもので、プロデューサーが会社に申請し預かります。これを「仮払いをキル」といいます。
仮払いは長期の海外ロケ等になると1000万円近い額になります。仮払いは日常の経費としてAPやADに対しても振り分けられます。ADに渡される仮払いは収録のための小道具などの備品の購入や、編集時の食費、交通費などの支払に充てられます。
いずれにしろ給料以上の仮払い金を持ってしまったADは自分の金との区別がつかなくなってしまうのです。
仮払いで生活しているAD、仮払いを持ったまま姿を消したAD、白紙の領収書に全部同じ字で金額を書き込んでバレてしまうAD、領収書をなくし給料のほとんどが差し引かれてしまうAD、仮払いにまつわる物語は後を絶ちません。
「仮払い精算」。これはテレビマンにとって番組を作ること以上ともいえる大事なお仕事の一つなのです。

D V E

テレビを見ていると、画面がページのようにめくれたり、回りながら飛び出して来たりします。あの手法がDVEです。
異次元的な動きで画面が移り変わる技術で、デジタル・ビデオ・エフェクトの略をいいます。
最近はDMEとか ADO、アベカス、ミラージュ、ハリーといったエフェクターの機種名で呼ぶ傾向にあります。
DVEは効果的に使用することによって番組は立体的になり華やかになりますが、あまり乱用するとそればかりが目立ち疲れます。
特になりたてのディレクターはDVEが使える喜びで、 やみくもに使用しますが、「何故その画面がそういう動き方をしなければならないのか......」。
DVE にはすべて基本の理屈があります。カットと OL だけの基本編集期間を経て、やっと一人前にDVEが使えるようになるのです。
「石の上にも3年でDVE!」。当社では若手にはしばらく DVE 禁止令を出しています。
今日の話はちょっと業界寄りすぎました......。

カンペ

だれにでも経験があるカンニングペーパーのこと。
テレビで使うカンペは試験とは違い巨大です。主に番組のオープニングのあいさつやプレゼントなどの決まりゼリフ、歌番組で他人の歌を歌う時などには大きな紙にマジックで書いたカンペがカメラ横から出されます。
タレントの目線がカメラからはずれているのはそのためです。番組収録の前日、AD はこのカンペ書きの作業のため徹夜となります。
製作会社のデスクが マジックの跡だらけなのはこのためです。
スタジオでのカンペ出しも AD の仕事です。それもかなり末端の AD が請け負います。
しかし、この作業をばかにしてはいけません。動くカメラをよけながら、しかもタレントの目線はカメラに向けながら、そしてめくるタイミングと、音を立てないデリケートな神経、うまくいっても決してほめられることのないAD作業の極致がここにあります。
出演者とADの心をつなぐ一枚の紙、それがカンペなのです。

完パケ

編集、MA、すべてが終了し、完成したテープを完全パッケージつまり完パケと呼びます。
この完パケテープを決められた日時までにVTR管理室に届け、すべては完了します。これを完パケ納品といいます。あとは放送されるのを待つだけです。
完パケは , ここに至るまでの汗と涙の結晶です。この納品はとりあえず信用のありそうなADの仕事となります。
普段ADはタクシー使用禁止の社則も、この時だけは例外となるのです。
以前某制作会社で電車を使用したADが車内で眠ってしまい、気が付くと網ダナの上には何もなかった! という世にも恐ろしい出来事がありました。
このほかにも完パケを間違って消してしまったり、徹夜明けの担当 AD がそのまま行方不明になったり、貴重なものにもかかわらず、完パケは常に危険にさらされているのです。
それでも長いテレビの歴史の中で「完パケ未納品のため放送中止」という話は聞いたことがありません。本当に不思議です......。

レスポンス

番組放送時には視聴者からさまざまな反応の電話がテレビ局に入ってきます。このため放送時には制作スタッフ数人が番組デスクに待機します。これをレスポンスを受ける、といいます。
一番多いレスポンスは、おいしい店や激安店などの連絡先問い合わせです。スタッフは取材先一覧リストを手に対応します。このあたりの対応は新人のADで十分出来ます。
「あそこの店はオレも行ったが決してうまくなかった!」「もっとうまい店を知っているから次はそこを取材しろ!」。レスポンスを受けたスタッフは丁重に話をうかがい「貴重なご意見ありがとうごさいます」。「あのタレントは嫌いだ、なぜ出すんだ!」受けたスタッフは「だったら見ないで下さい!」と言いたい気持ちを抑えて「貴重なご意見ありがとうございます」としめます。
「素晴らしい番組で感動しました。スタッフの皆さんガンバッて下さい!」こんなレスポンスはめったにありません。

スタンバイ

出演者、小道具などの用意、準備、待機、テレビの現場はスタンバイの連続です。
本番が始まる時はすべてのセクションがスタンバイオーケーでなければなりません。出演者は決められた位置でスタンバイします。これを“スタンバる”といいます。
ディレクターがサブから「○○スタンバッてるか?」と聞くとフロアの AD が、あわててタレント控室にとんで行くケースがよくあります。
「ザッツ宴会テイメント」という番組では、 タレント自ら「私たちスタンバッてま〜す!」と叫びます。
しかしテレビの世界においてスタンバイは番組収録中のみにある話とは限らないのです。
ここだけの話ですが、すでにこの時期、4月改編を終えたにもかかわらず、テレビ局の編成では「あの新番組はすぐにコケそうだから、次の企画をスタンバイしとくか!」なんて話が出てるのです。
我々の知らないところで、さまざまなことがスタンバイされてるのです。恐ろしい話ですね。

オペレーター

番組の編集作業は専門の編集スタジオで行います。そこの技術者である編集マンがオペレーターです。
最近は女性のオペレーターも増えてきました。
彼らはディレクターのプリ編してきたデータをもとに、編集卓の無数にあるコンピューターのボタンを目にもとまらぬ速さで押しながら 1 カットずつつないでいきます。
彼らは技術系の人たちですから決して感情を表に出しません。
無能なディレクターがどんなに下手なつなぎを要求しても「それ違うなー!」なんてことはけっしていいません。そんなことでケンカして、時間がかかるより、早く終わって帰った方がいいにきまってます。
「次のカットは右上から回転しながら飛び込んできて!エッジは緑で!」なんてつまらないイメージ要求しても、次の瞬間には出来てきます。
こうしてオペレーターはADが眠ってもディレクターが眠っても、彼だけは 24 時間眠らずに作業に集中します。
毎日テレビが見られるのは、彼らのおかげなのです。

バミる

出演者や美術セットなどの位置を決めた時、目印としてその場所にテープを張ります。これを「バミる」といいます。
活用としては「バミり」「バミる」「バミれ!」「バミろ!」「バミら なきゃ......」のラ行五段活用となります。
これは新人がテレビ業界に入って最初に覚える言葉です。この作業のためにスタジオで使用されるテープは、布であれ、ビニールであれ、バミテープ、 略して「バミ」と呼ばれています。
新人は「バミ持ってるか!」と確認されます。バミは街で売ってるビニールテープと同じものですがコンビニで「バミください!」と言っても通用しません。
スタンバイの多い番組になると、スタジオの床はバミった跡だらけになり、どのバミが何のスタンバイだか分からなくなってしまいます。そのためフロアの AD は何色ものバミを腰にブラ下げているのです。
腰からバミがとれるようになれば、AD として一段昇格したことになります。ブラ下げたバミは柔道の白帯のようなものなのです。

アイソ

アイソレーション 隔離・分離・孤立・ひとりぼっちの略。
バラエティー番組などの収録ではスイッチャーが各カメラの画像を拾いながらVTRに収めていきますが、実は同時に別の画像を拾いながら別VTRも収録しているのです。
メーンのVTR「本線」に対して、こちらは「アイソ」と呼ばれ、この作業を「アイソを切る」といいます。
「アイソ」は編集の際、本線同士でうまくつながる画像がない時、「アイソならあるかもしれない!」と利用されるためにスタンバイされるものです。
アイソは基本的には別のディレクターが切りますが、人が足りない時はTKやディレクター本人が切ります。
しかしこの切り方がダメだと編集の時、何の役にも立たないのです。「あいつにアイソを切らせなければよかった!」とスタッフにアイソをつかされてしまいます。
今日の話は、よくわからなかったかもしれませんし、つまらないオチでアイソミマセン。

打ち切り

継続している状態を途中でやめて終わりにすること。
上層部から番組の打ち切りを言い渡されると、プロデューサーは出演者及び各セクションにその事実を打ち明けなければなりません。
打ち切りの打ち明けはタイミングが大切です。あまり早く言ってしまうと、全員が逃げの態勢に入り、残された何本かの収録はカスみたいなものになってしまいます。かといってギリギリまで言わないでいると、ほかからその事実が聞こえてきてつるし上げにあいます。ましてや皆、次の仕事をさがさなければならないのです。
打ち切りの打ち上げでプロデューサーが言う言葉は決まっています。「また、このメンバーて集まって、いつか番組を作りたいですね!」。しかし、そんな話が実現したことがない、ということはだれもが知っています。
こうして打ち明けに始まった打ち切りは、打ち上げで終わりを告げるのです。
皆自分の道を選んで旅に出る、打ち上げは田舎の卒業式みたいなものなのです。

ワンクール

テレビ人は皆知ってますが、1年は52週なのです。それを4で割って13週、これをワンクールといいます。
13 本、番組の放送回数はこれが単位となっています。13、実に不吉な数ですね。
4月から始まる番組はドラマであればワンクール13本で完結します。つまり6月末には終わって7月には次のドラマが企画されているのです。
バラエティーなどでは、よほどのことがない限り2クール、つまり9月いっぱいまでは続く予定でスタートします。
従ってプロデューサーは予算をそのクール数で組み立てます。美術セットの制作費が1000万円だとすれば、2クールで、「1回38万円くらいで償却すればいいな」というように考えます。
しかし、計算通りにはいきません。視聴率低迷からくる「打ち切り!」。これが5本目くらいで決定した場合、制作会社は13階段を地獄の底へと落ちていくのです。
「あの番組はワンクールもたないだろう!」。4月新番組の読みはもう始まっているのです。

番組フォーマット

番組の放送枠の中で CM 挿入個所などを決めたもの。これは番組が決定した時、編成から「これがこの番組のフォーマットです!」と渡されます。
番組制作者はこのフォーマットの中でいかに効果的に視聴率を稼ぐか?という研究に入ります。
視聴率は番組中のCMはもちろん、番組は終わってるのに終了後の後CMやステブレなんてものまで数字がカウントされてしまいます。
そのため提供コメントが入ってもチャンネルを変えさせない方法を考えたり、本編が終わってからのENDマークまで出演者が出てきて引っ張ったり、フォーマットの枠の中で限界まで制作者はあがいているのです。
そして、O・A当日は各局の番組を並べて見ながら「しまった!うちがいちばん最初にCMに入ってしまった!ここでチャンネルは変えられてしまう!」などと内容のひどさ以上に反省したりするのです。
この苦労は NHK の人たちには絶対に体験することの出来ない作業なのです。

おいしい

グルメ番組で、リポーターが料理を口に入れた瞬間にも使いますが、味だけでなく「おいしい」にはいろいろあるのです。
一般的には楽な労働で報酬がいい時「この仕事はおいしい!」といいます。
わずか数秒の出番で主役を食ってしまう役の時「このポジションはおいしい !」といいます。
ディレクターは美女の裸と温泉めぐりの現場で「このロケおいしいな!」とカメラマンと涙します。
プロデューサーは「ちゃんとおいしいシチュエーション作るからさ......」と言ってタレントに出演交渉します。
タレントは出演中ハプニングがおきて大恥をかいた時でも「あそこはおいしかったね〜、ねらってやったんじゃないの!」とからかわれ「いや〜、おかげさまで ......」と照れながら喜びます。
総グルメ時代、皆おいしいものを探してやまないのです。
ところで、少ないスタッフで楽に作れて視聴率がとれて利益が上がり長く続く、つまり「おいしい企画」ありませんか......?

使用許可

道路でロケをする場合、最寄りの警察署に行き、道路使用許可をもらいます。
公園でも駅でも車内でもキチンと許可をいただいて撮影をしなければなりません。
有名人の顔写真を使用する時も、所属事務所に何のために使うものかを説明し本人の許可をもらいます。
むかしの映画のシーンを使用するときも配給会社にことわって1秒数万円を支払ったうえで放送します。
相撲の名勝負を使用する時は相撲協会にお伺いをを立てますが、ほとんどOKは出ません。
こういう許可をとらずにやってしまうことを「ダマテン」といいます。道路使用許可をとらずに撮影している時、オマワリさんに出会ってしまうと責任者はそのまま警察に連れて行かれ、ロケは即刻中止となります。
映画や顔写真を許可なしに使用すると訴訟問題にまで発展し、制作会社はつぶれてしまいます。
プロデューサーの皆さん、「チェック一秒、ケガ一生」、「ダマテンは忘れたころにやってくる!」、くれぐれも気を付けて下さい。

美術セット

スタジオのセットは番組にとって顔といえます。美術セットは専門の美術会社に発注します。
基本的にはディレクターが番組内容と自分のセットイメージを説明して、美術デサイナーがそれをもとにデザインします。
この打ち合わせにはプロデューサーと美術進行が同席します。彼ら抜きで進めると予算のことを無視してプランが盛り上がり、結果とんでもなくカネがかかり、制作と美術の間でトラブルが発生してしまうのです。
美術セットは簡単な家1軒を建て るのと同じくらいの費用がかかります。普通の人が一生に1回、建てられるかどうかのものを、アパートの家賃も滞納してるようなディレクターが思いつきで1〜2時間の打ち合わせで発注してしまうのです。
トラブルのおきない方が不思議です。家を建てる時は今後の自分の生活設計を考え、夢の実現に向けてじっくり計画を立てましょう。
しかし、そんなことをしていたら......本番の日はせまっているのです。

>> 項目一覧 <<

現在45話まで掲載させて頂いております。
残りの『業界用語』も順次公開していきますのでお楽しみに!